JAL再建の視点と我が国の航空政策
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経営再建を目指す日本航空(JAL)は、法的整理を選択し、会社更生法を申請、法律上の管財人を企業再生支援機構(再生機構)が担って3年間で再生を図ることとなっている。
「着実な再建計画を」
JALに対しては、これまで政府は、日本政策投資銀行を通じて、昨年6月から今年1月にかけて2000億円のつなぎ融資を行い、再生機構を通じて3000億円の出資、さらに、融資(DIPローン)枠を6000億円設定する予定だ。
これらの税金は、再建計画が「成功」すれば、国庫に帰ってくるものだ。(実際、ダイエーやカネボウの再建を手がけた再生機構の前身の産業再生機構は、最終的に「利益」を出して国庫に返納している。
JALの再建についても、これだけの税金を投入するのだから、再建計画(1万5千人の人員整理や子会社や資産の売却を予定)は確実なものとしなければならない。
「競争環境の確保」
その一方で、もう1つの重要な論点は、「競争環境の確保」だ。たとえばダンピング。JALが、公的資金を使って安売り攻勢をかけ、競争環境が歪められるようなことは避けなければならない。
欧州では、公的資金による支援を受けた企業に対してマーケットの競争環境を維持するための制約を課したガイドラインがあり、我が国でも欧州にならって公正取引委員会のガイドライン策定を検討する必要がある。
「オープンスカイ」
オープンスカイとは、他国の空港に相互に自由に乗り入れ出来るようにする協定で、今年の10月から日米間で実行に移されるもの。
我が国の空港は、羽田と成田の発着枠は飽和状態だが、その他の空港は発着枠が十分に余っている。さらに、羽田空港の第4滑走路が今年10月に開通し、成田と羽田とも発着枠が拡大するため、その枠をどう配分していくかが航空産業の競争力を強くする上で重要となる。
「国際線1社か2社か?」
日本の航空会社の競争力を強めるために、JALは国際線から撤退し、ANA一社体制にすべきではないか、という議論もある。国際線はボラティリティが高い(需要の変動幅が大きい)ため、再建企業に不向き、また、国際線を2社以上保持している国は、日本以外では米国、韓国くらいしかない、といった論拠だ。
オープンスカイや国際的なアライアンス体制の強化で、国際線市場の実態は相対化しているので、「一社か二社か?」のような二元論ではないというのが私の考えだが、我が国航空産業の国際競争力を総じて強化するために、「競争環境を歪めないこと」「JALの再建計画を厳しくチェックすること」が政府に求められる。
三村和也